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遊戯王 デッキ作成いろは|™のち

こんにちは、寒くなってきましたね

皆さんいかがお過ごしでしょうか、ライターの™のちです。

▼著者プロフィール

™のち: @kishao_ ~実績~ CS優勝3回 ベスト16以上30回以上 ~著者紹介~ 関西で活動している™のちといいます。 競技プレイヤーとして活動しており、今期のトップシェアのデッキであるオルフェゴールの原案を作ったりと、デッキビルドが得意です。 今回は2019年10月環境で活躍した【オルフェゴール】デッキはどのようにして生み出されどうやって完成度を高めていったのか?という話を軸に環境に勝てるデッキの作り方について考察していこうと思います。 何故そう考察したのか?という思考の部分は文字背景の色を変えて注釈しておくので、深い思考まで読み取っていただけたらうれしいです。

“メタゲームの想定”

時は2019年9月まで遡ります。それまでの環境は【転生炎獣】【サンダードラゴン】【オルターガイスト】【閃刀姫】【サブテラー】【ドラゴンリンク】【エンディミオン】と色々なデッキタイプが存在した混沌とした環境でした。その中でも頭一つ抜けていたのが【ドラゴンリンク】で各デッキはこの【ドラゴンリンク】の超展開に非常に悩まされていました。 そのことから、10月の制限改定では大幅な【ドラゴンリンク】の弱体化+その他環境デッキの弱体化が入ると予想し、新制限のデッキ作りに着手しました。 ※KONAMIは非デザイナーズデッキや先行での制圧を嫌う傾向にあるため 毎年10月制限というのは9月に海外先行カードが日本に逆輸入される「エクストラパック」の発売されるため、非常にパワーの高い環境になりがちです。例にもれず今年も海外からえげつない効果を持ったカードが輸入されました。特に話題になったのはこの二枚で、環境に刺さる強烈なメタカードとして早くから注目されていました。 《原始生命態ニビル》 画像引用:遊戯王オフィシャルカードゲーム公式Twitter 《冥王結界波》 画像引用:遊戯王オフィシャルカードゲーム公式Twitter このカードたちの存在により想定される環境の変化 ・《原始生命態ニビル》をケアできない展開系デッキが軒並み淘汰される ・各デッキのサイドデッキに《原始生命態ニビル》が入る ・《冥王結界波》がモンスターだけで妨害を構える【サンダードラゴン】【エンディミオン】にクリーンヒットしているので《冥王結界波》の流行りしだいではその2つも怪しい ※この2枚のカードは採用されるされない関係なく「このような効果を持ったカードが存在する」事に意味がある系のカード 【セフィラ】の《PSYフレームロード・γ》の様に、相手のデッキに入ってる入ってないに関わらず脳内にちらつく事によってプレイが歪んだり、構築が歪んだりしてしまう事から環境に大きな影響を与える事は間違いないと読んだ そして、発表された制限改訂 総評としては大体想定していた通りの制限改訂でした。【ドラゴンリンク】の大幅な弱体化、その他デッキパーツの緩和といった内容でそれまでの考察を大きく変えることも無くデッキ作成に取り掛れる内容で安心していました。 ただ、唯一意外だったのが《レディ・デバッガー》の緩和です。世界大会でも猛威を奮った【転生炎獣】の強力な初動であり、【転生炎獣】は少し規制されるのではないかという大方の予想を裏切った形になりました。《レディ・デバッガー》の緩和により、来期も【転生炎獣】が強力なデッキタイプある事は間違いないと思われました。 制限改訂が出た当日、エクストラパックの発売と制限改訂から環境予想を行いました。 ・環境トップメタ 【サンダードラゴン】 ・環境2番手 【転生炎獣】 【オルターガイスト】 【閃刀姫】 【未界域オルフェゴール】 【サブテラー】 【エンディミオン】 《原始生命態ニビル》に引っかかること無く複数の妨害を構えながらワンキルもできる【サンダードラゴン】が前期に引き続き環境トップに居座り、【サンダードラゴン】に追従する形でメインギミックで【サンダードラゴン】に対して相性有利な【オルターガイスト】やその他前期からしぶとく残っているデッキ達によって環境が形成されると予想しました。 ※【未界域オルフェゴール】は《外神アザトート》を早期に成立させながら展開できるので、《原始生命態ニビル》の影響を受けにくく非常に注目されたいたデッキタイプなので環境当初は強い強くないに関わらず一定数いると考えていた 実際新制限1発目のCSの分布を確認すると なかなか悪くない考察が出来ていたと言えます

“デッキタイプの決定”

ある程度の環境考察が終わったので、デッキを作っていきます 筆者のデッキ作成プロセスは デッキタイプの決定 ↓ デッキテーマの決定 ↓ 採用カードの決定 ↓ 調整 ↓ デッキ完成 といった手順で進めていくので、今回もこの手順に従って記事を進めていきたいと思います まずデッキタイプの決定ですが、これは大きく分けて 1) 強力な先行展開や後攻ワンキルなどでゲームの早期決着を主とする【展開系デッキ】 例)ドラゴンリンク、エンディミオン 2) 柔軟な対応力で常に自分が有利な状況にゲームをコントロールしながら戦う【コントロールデッキ】 例)転生炎獣、閃刀姫、サンダードラゴン 3) 1枚でゲームを決定するような強力な罠カードを多く採用し戦う【罠デッキ】 例)オルターガイスト、サブテラー の3つがあると考えています ※遊戯王には多種に渡るデッキタイプが存在するため大枠の分類間でのじゃんけんのような有利不利を付けることはできないが、環境を整理する為に分類分けしておくと便利なので自分の物差しでいいのである程度分けておいた方がいいです 当時のツイートからも分かるように、《原始生命態ニビル》、《冥王結界波》の存在から【展開系デッキ】は先行展開に非常に求められる水準が高いと思いパス よって【コントロールデッキ】、【罠デッキ】に分類されるデッキを組むことにしました

”デッキテーマの決定”

次にデッキテーマの決定ですが、この環境で自分の求める条件を書き出してなるべくその条件にあったテーマを探します。今回自分の求める条件は 1)《原始生命態ニビル》によって先行展開をリセットされない 2)《冥王結界波》によって用意した妨害が0にならない 3)【サンダードラゴン】が擁立してくる《超雷龍 ー サンダードラゴン》によってメインギミックがロックされない 4)【未界域】のなどの先行展開の《トポロジック・ガンブラー・ドラゴン》のハンデスにある程度耐性がある 5)トーナメントを勝ち抜くだけの地力と安定感がある 6)プレイの再現性が高い ※「プレイの再現性」というのはどのようなハンドが来ても同じような展開ができることを指します、「プレイの再現性が高い」というのは環境序盤では大きく勝ちにつながる要素だと考えていて、環境当初はトーナメントを勝ち進んでいく中で多くのデッキタイプが存在する関係上多種多様な手札誘発を受け、そのような環境で安定してどのようなハンドでも決まった展開ができるというのは大きなアドバンテージになります。また、帰着する盤面が同じになってくれるというのはプレイの安定を生み、触って間もないデッキでもしっかりと戦うことができます。 まず既存のデッキから以上の6つの条件を満たしているかの選定を始めました。まとめた表がこれです この表で特に注目すべき点は条件3と条件4の列です。条件1,2,5,6を満たしているデッキは多いものの、条件3,4を共に満たしているのは【未界域オルフェゴール】だけです。また【未界域オルフェゴール】の行に注目すると、条件1,2が△な理由は【未界域】要素が含まれることによる過剰な展開と前のめりな最終盤面、条件5,6が△な理由は【未界域】要素の不確定な部分によるものだと考えました。 このことから、【未界域】要素が悪影響を及ぼしていると思い、混ぜ物無しの純【オルフェゴール】デッキなら今回設定した6つの条件を高い水準でクリアできるのではないかと考えました。 条件1 〇 《オルフェゴール・スケルツォン》を墓地に送った状態で展開を終えることによる《原始生命態ニビル》のケア 条件2 〇 《オルフェゴール・ガラテア》の効果による《オルフェゴール・クリマクス》、《オルフェゴール・バベル》での妨害 条件3 〇 【オルフェゴール】ギミックにサーチカードが存在しない、《宵星の機神ディンギルス》による破壊耐性持ちの《超雷龍 ー サンダードラゴン》のお手軽除去 条件4 〇 【オルフェゴール】は墓地リソースで戦うデッキなので、ハンデスを食らっても展開できる可能性がある。 条件5 〇 前々期は環境トップメタの一角であったことから、地力は折り紙付き 条件6 ? デッキを作成していく中で見つける。最低限の展開の《オルフェゴール・ガラテア》成立は容易 また、【オルフェゴール】というテーマ自体が次期環境トップメタと予想した【サンダードラゴン】にとても相性がいいのも、【オルフェゴール】を選択した理由です。

”採用カードの決定”

デッキテーマが決まれば次は40数枚のメインデッキと15枚のエクストラデッキを組み立てる作業です。 ※サイドデッキはその時その時の流行りや地域ありきでサイドデッキの話までしてしまうと膨大な量になってしまうので今回は解説しません、需要があればサイドデッキの作り方についての記事も執筆しようと思います。 まず【純オルフェゴール】が予想した各環境デッキに対し、どのような相性なのかを考えます。 ・対【サンダードラゴン】有利 《超雷龍 ー サンダードラゴン》のサーチ無効がほぼ効かない、《宵星の機神ディンギルス》や《オルフェゴール・バベル》による《雷神龍 ー サンダードラゴン》の無効化 ・対【転生炎獣】微有利 メインギミックのぶつけ合いならパワーラインの高い【オルフェゴール】に少し部がある、《宵星の機神ディンギルス》による《転生炎獣ベイルリンクス》の破壊体制付与を無視した除去も魅力的 ・対【オルターガイスト】微不利 メインギミックのぶつけ合いだと不利、《オルターガイスト・メリュシーク》の《宵星の機神ディンギルス》の破壊体制を無視した除去や《オルターガイスト・シルキタス》のバウンス効果など全てきついが、【オルターガイスト】側も【オルフェゴール】の先行展開を捲ることが難しいので先行ゲーになりがち。試合がもつれると厳しい、要対策 ・対【閃刀姫】不利 《閃刀機 ー ウィドウアンカー》、《閃刀機 ー シャークキャノン》がかなりきつい、【閃刀機】は【オルフェゴール】の先行展開を捲ることも容易なので非常に相性が悪い ・対【未界域オルフェゴール】5分 お互い相手デッキに対しての決定打となるようなカードが存在しない同型の勝負なので五分 ・対【サブテラー】微不利 メインギミックのぶつけ合いは体感5分《センサー万別》や《王家の眠る谷 ー ネクロバレー》などの【オルフェゴール】に対して強力な効果を持つ永続カードが絡むと一気に不利になる ・対【エンディミオン】5分 お互いにお互いの先行展開を捲ることが非常に難しいので先行ゲーのマッチング 以上の考察から、魔法・罠カードを伏せながら戦うビートデッキに対して相性が良くないことが判明したのでこれらのデッキに強い構築を目指してデッキを制作していきます。

・初期構築

(《テセウスの魔棲物》は《ミレニアム・アイズ・サクリファイス》、裏側は《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の代わり) 前述した相性が悪い【オルターガイスト】【閃刀姫】【サブテラー】に対して強く出れるように一枚である程度の働きをしてくれる《神の通告》《大捕り物》そして、課題であった永続系統に触る札として《バージェストマ・ディノミスクス》を採用し展開札として《簡易融合》を採用することで《宵星の機神ディンギルス》と《エルシャドール・ミドラーシュ》による強力な特殊召喚ロックギミックを搭載しました。 《オルフェゴール・プライム》は初期構築思考段階からパワーの高さにすぐ気が付き、これまでの【オルフェゴール】デッキでは採用されていなかったものの、罠や誘発など展開し終わった後に引いても強いカードが多いこの構築なら絶対活躍してくれると考え採用しました。 この構築の基本展開は《オルフェゴール・ガラテア》+《宵星の機神ディンギルス》+《オルフェゴール・クリマクス》or《オルフェゴール・バベル》+αで、言うなれば《宵星の機神ディンギルス》主軸のハイビート的なデッキにまとめられていました。

・中期構築(IGNITION ASSAULT発売前)

原案構築を信頼している数人のプレイヤーたちに使用してもらい大きく構築が変わりました。特に大きく変わったのは先行展開で、従来の【オルフェゴール】モンスターで固めた最終盤面から《IP:マスカレーナ》+《オルフェゴール・バベル》+αという最終盤面になりました。これによって相手の伏せを《トポロジック・トゥリスバエナ》で相手ターンに一掃したり、と罠デッキ相手に柔軟な戦い方ができるようになりました。 前章の”デッキテーマの決定”で話した条件6を達成できた瞬間です ※デッキの原案ができたら自分だけで考えずに色々な人に相談するのが大事です。「自分だけで作りたい!!」という考えやプライドは捨てて、たくさんの人に使ってもらった方が自分では考えつかなかったプランや、採用カードをより見つけやすくなりますし、調整量も段違いです このデッキにおける《IP:マスカレーナ》と《機巧蛇-叢雲遠呂智》は大きなソリューションでした。この案は今期関西で《オルフェゴール》を使って最も活躍しているプレイヤーのひとりであるうえにーさん(@ueni_0414)のもので《機巧蛇-叢雲遠呂智》によって各種【トポロジック】系統の爆発回数をかさまししながら、盤面に《宵星の機神ディンギルス》+《オルフェゴール・ロンギルス》、墓地に《オルフェゴール・トロイメア》を特殊召喚4回以内で用意することで《オルフェゴール・トロイメア》の効果で《機巧蛇-叢雲遠呂智》をデッキから墓地に落とし《宵星の機神ディンギルス》の攻撃力をあげた後バトルフェイズに入り《機巧蛇-叢雲遠呂智》を自身の効果で特殊召喚、2450+3400+2500でメインフェイズにしか効果を発動できない《原始生命態ニビル》をうまく透かしてのワンキルなど非常に器用なプレイができるようになりました。 うえにーさんが自身のブログ「うえにっき」の中でこれらのカードについてより詳しく解説してくれているので是非ご覧ください 初期構築から不採用になったカードについても少し解説していきます ・《ワン・フォー・ワン》 初めの採用意図としては一枚初動に効果無効系を充てられてしまった時のリカバリー&ハリファイバーからの【オルフェゴール】モンスターの供給でしたが、調整段階からそもそも打てないハンドが多く手札を消費するカードの中で優先度が一番低かったので不採用に ・《簡易融合》 《増殖するG》をもろ食らいしてしまうのと《IP:マスカレーナ》の採用などによるエクストラデッキの枠の無さなどから不採用に ・《墓穴の指名者》 《抹殺の指名者》のほうが受けの範囲が広いので入れ替わりで不採用 ・《神の通告》 個人的には好きなカードでしたが、【オルターガイスト】相手の打ちどころの少なさなどから不採用、入れるなら【オルターガイスト】にも強く打てる《神の警告》を《神の通告》だと考え代わりで採用していた時期もありました

・終盤構築(IGNITION ASSAULT発売後)

中盤構築と大きく違うのは《IP:マスカレーナ》が2枚採用になった点と《墓穴の指名者》がまた入り【指名者】6枚構築になった点です。【指名者】が6枚にした理由を上記構築をいち早く使用していたきょろろさん(@tanbobobobo)に聞いたところ「マスカレの基本展開が通ればメインは大体勝てるから罠を最小限にし自分の展開を通す事を意識した」とのことで、《IP:マスカレーナ》+《オルフェゴール・バベル》という強靭な先行展開を得た恩恵が構築面にさえ影響していることがよくわかります。このころの構築になると初期構築から大きく罠の枚数が減っており、罠を引き込みすぎて展開ができないなどの事故も減ってより安定しているのが安易に予想できます 《IP:マスカレーナ》が二枚になっているのも特徴的で、これは基本の先行展開をした後に《原始生命態ニビル》を食らってしまっても、墓地の《オルフェゴール・スケルツォン》などを絡めてもう一度《IP:マスカレーナ》をリンク召喚することができるようになっており、【オルフェゴール】調整メンバーの調整練度の高さがうかがえます ※初期構築の罠で罠デッキを相手にするプランが完全に廃止された形になっているのも注目するポイントで環境が固まったことにより、メタを絞ることができたが故の物でどれだけこのような構築にできるかがデッキ構築をするうえで大きな課題です この【指名者】6枚構築が今期の最終的な【オルフェゴール】の構築になりました。この構築が愛知CSで使われ、足立CSで使われ、環境当初仲間内しか使っていなかった純【オルフェゴール】でしたが今や一躍環境トップメタにまで進出し、環境を大きく動かしました。 ※自分が作ったデッキがCSの分布で一位になっているの見たときはほんとにうれしかったです、着眼点は間違ってなかったんだなーと。デッキビルダー冥利につきます

あとがき

いかがだったでしょうか、今回は【オルフェゴール】というデッキの作成過程を軸にデッキ作成のプロセスを一連の流れで説明させてもらいました。 本当に環境を席巻するデッキというのは一朝一夕で完成するものではないということがよくわかっていただけたかと思います。 この数分の中に色々な人がたくさん考えに考え抜いた三か月を凝縮したわけですが、この記事で現在デッキ構築に悩んでいる方々が何かを得ることができたら頑張って書いた甲斐があったなあと思います。 この記事の中で紹介しきれなかった方を含め沢山のアドバイスをくれた方に心からの感謝を この記事がよかったなと思っていただけたらRT、拡散のほうよろしくお願いします! 質問やご感想、「このカードについて考察してほしい!」などの要望がありましたら™のちのTwitter(@kishao_)や質問箱の方によろしくお願いします。
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