不完全情報ゲームの遊戯王における”最善”の選択肢とは | ™のち

こんにちは、お久しぶりです。™のち(@kishao_)です。 随分堅苦しいタイトルになっていますが、遊戯王のブログ文化は数年前に比べるととても盛んになっていて、デッキの解説や回し方、対策の方法など、検索すれば一発で出てくる時代になりました。 ですが、もっと根本の”対人ゲームにおける読み合いや最善の選択”について考察している記事はほとんど無いなと思い、思考の部分なので完全に個人的な意見ではありますが少しお話出来たらいいなと思い記事を書かせていただく運びになりました。 今回の記事は遊戯王における最善の選択の話をするための前置きが少し長くなってしまいますが、遊戯王に関わらず色々なゲームにも通じる内容となっているので最後まで読み進めていただければありがたいです。 特に初心者やCSには出たことは何回かあるけど思ったより成績が振るわないなどといった悩みを持つ中級者ぐらいの方に刺さる内容になっているので是非読んでみてください!

不完全情報ゲームってなに?

完全情報ゲームではない動学ゲームを不完全情報ゲーム(game of imperfect information)と呼びます。具体的には、動学ゲームにおいて、少なくとも1人のプレイヤーが、意思決定を行う少なくとも1つの時点において、それ以前に行われた少なくとも1人のプレイヤーが行った意思決定の内容を観察できないのであれば、それは不完全情報ゲームと呼ばれます。 参照 遊戯王は紛れもない不完全情報ゲームで、ゲームを始めるまで相手のデッキ枚数以外の情報はありません。皆さんが良く知っている物で例を挙げるなら麻雀やUNOなんかもこれに当たりますね。ざっくりお互いに把握できる情報と出来ていない情報がある状態で進んでいくターン制のゲームと考えてくれたらいいです。 完全情報ゲームはその逆で、チェスや将棋、オセロなどといったお互いが全ての情報を把握した状態で進むゲームのことです。

完全情報ゲームとの明らかな違い

不完全情報ゲームと完全情報ゲームの大きな違いは、不完全情報ゲームには完全な攻略法がないということです。先ほどの章で完全情報ゲームの例としてオセロを出しましたが、理論上は確実に勝利するための手を全て解析することが可能で、遠くない将来にはオセロ程度の複雑さのボードゲームであればお互い最善の手を指し続けた場合先行or後攻のどちらが絶対に勝つ事が完全に計算できるようになると考えられています。 先日、藤井聡太七段が棋聖戦の中で指した一手が機械に4億手読ませた所までではベスト5にも出てこなかったが6億手まで読ませると最善の手だと評価した事で話題になりましたが、今や多くのプロ棋士はAIで将棋を勉強しているように完全情報ゲームにおいてAIでの解析は切っても切り離せない重要な要素になっています。 もちろん不完全情報ゲームの麻雀プロやポーカープロなどもAIを使用して勉強していますが、完全情報ゲームの機械学習と大きく違う点はどこまでいってもあくまで確率の上の物でしかなく、運の要素や対戦相手との噛み合いによって流動的に最善の手は変化していくということです。

不完全情報ゲームは確率の範疇を超えない

先ほどの章で例に出した将棋とポーカーの解析画像を比較してみましょう。

上が将棋のある局面における解析画像で下がポーカーのある局面における解析画像です。将棋は解析した時と100回同じ局面が来たら100回最善手とされる手を指すべきだとされているのに対し、ポーカーは解析した時と100回同じ局面が来たら34回と66回に分けて違う行動をする事が最善だとAIは示しています。 これは運の要素と対戦相手の思考がゲームに大きく影響を与えるからで、不完全情報ゲームにおいて完璧な一手は存在しないのです。

遊戯王に”完璧”は存在するのか

ここから遊戯王の話に戻りますが、遊戯王にはマナの概念がなく、条件を満たしていれば好きなカードを好きな時にプレイでき、スペルスピードの概念が存在するお陰でデュエルマスターズやシャドウバースなどと違い相手のターンで自分のカードをプレイする機会が数多くあり、数あるカードゲームの中でも忙しさと難しさは群を抜いてると思います。そのうえ20年間に蓄積された莫大なカードプールの中から相手がどのカードを採用していて、持っているのかを考えながら進めていかなければなりません。 遊戯王で”完璧”を求めることは限定的な場面(相手の行える何らかのアクション回数をこちらの妨害の数が上回っている様な状態や相手のデッキリストを知っている場合)を除いて基本的には不可能で、常に何らかの裏目が存在が付きまといます。 CS出始めなどの中級者の方は全てに完璧を求めすぎてしまうがあまり、採用カードの話やある局面でのプレイについて「このカード来たらどうする?」「これ一枚で負けるくない?」などと必要以上に詰めすぎてしまい、本当に考えなければならないことを見失っている方が多い印象があります。 40枚の上からたったの5枚を引いて戦うゲームです。負ける時は負けます。割り切りの気持ちも大切にしましょう。

遊戯王で勝つために何が必要か

前章で中級者の方は考えすぎで本当に考えなければならないことをスルーしていると話しましたが、本当に考えなければならないこととは何なのでしょうか。遊戯王を勝つことにおいて最も重要な要素は何なのか。 いきなり結論からいうと”大局観”です。 自分の使用しているデッキはどのような強みがあって、どのような勝ちパターンがあるのか、そのパターンに入るために何をしなければならないか、今自分は優勢なのか劣勢なのか、相手は何をしたいのか、これらの大まかな要素を事前の知識としてはもちろん、ゲームの中で感じ取り大筋の勝利までのビジョンを見定めることが重要です。 きちっとした大局観を持っていれば細かい場面でのプレイも向かう方向が分かっているので大きなミスをすることが減りますし、もし窮地に立たされても細い勝ち筋を追えるようになります。 大局観を鍛えることで細かいプレイの精度も上げることができるようになり、本当に振り返るべき局面だけを抽出して考えることが出来るようになるのです。

遊戯王はメンタルゲーム

技術的な面では”大局観”が大事という話をしましたが、メンタル面も大きく勝敗にかかわります。「この人に全然勝てないよな~」だったり「次から一試合も落とせない」などといった気持ちは人によっては力になったり枷になったりします。 CS中にミスを反省しすぎたり、負け試合を過度に振り返ってしまったりすると次のゲームに影響を及ぼす可能性があるのであまり考えすぎない鈍感さも必要だと思います。 筆者はゴリゴリの理系でオカルト的なことはあまり信用していないのですが、遊戯王というゲームが不完全情報ゲームでメンタルが大きくかかわってくる以上「流れ」(とまではいかなくても運要素が絡むゲームなので短期間の勝ち負けの偏りや分散)は絶対にあると思っていて時には理に反した押せ押せどんどんなプレイも必要な要素だと思っています。ミスりまくっても手札強すぎて勝ったわwってゲームがあってもいいですよね。 ルーティンのようなこともプラシーボ効果的な観点で考えるとメンタルを整えるのに結構重要だと思っていて、よく聞くのは「CSの前日はスリーブを新しいものに入れ替える」とか「CS中は勝っても負けても勝敗についてツイートしない」とかですかね。いつも同じにするっていうのは意外と重要で普段通りのパフォーマンスをするために一役買ってくれると思います。

もう一歩上のレベルにいくために

大まかな大局観を身に着けることが出来ればここから後は細かいカードのプレイ順やケアするべきカードの精査が重要になってきます。 ここからは大まかに「カードの使用順番の重要性」「負け筋と勝ち筋」について筆者の考えを話していこうと思います。 この辺の話は中級者の方が一段階レベルを上げるために重要な要素だと思うのでしっかり解説していこうと思います。

カードの使用順番から相手の手札を読み解く

対戦相手は純オルフェゴール、相手は先行で手札から《宵星の騎士ギルス》を通常召喚、①の効果で《オルフェゴール・カノーネ》を落としました。その後、《宵星の騎士ギルス》の②のトークンを生成する効果を使わずに墓地の《オルフェゴール・カノーネ》の効果を発動しました。 さあ、ここで問題です。この相手の行動から何が分かるでしょうか?ポイントは2つです。1つは《宵星の騎士ギルス》の効果で落としたモンスターが《オルフェゴール・カノーネ》だったこと。もう一つは《宵星の騎士ギルス》の②の効果を破棄したことです。 これらの2つのポイントから何が分かるかというと、1つ目のポイントから「手札に何らかのオルフェゴールモンスターを持っていてなおかつ種類は非常に高い確率で《オルフェゴール・ディヴィル》であること」が推測でき、2つ目のポイントは「こちらの《増殖するG》を止める札を持っていない確率が高いこと」が推測できます。 このようにして、相手のアクションから見えていない相手の残りの手札を推測する力は非常に重要で、「相手がこう動いてきたから〇〇を持っている可能性が高いので、そのカードを食らってもいいようにこうする」といったように、自らのアクションの理由付けをする事ができます。 先ほどの例に出した状況で、相手が展開を終えて二枚カードを伏せてターンエンドをしてきたとするとその二枚の伏せカードに《墓穴の指名者》と《抹殺の指名者》が含まれている確率は相当低いので、罠型の可能性も加味して《神の〇〇》系統か《無限泡影》、《王宮の勅命》《オルフェゴール・クリマクス》なんだろうなと仮定して動くことができます。 ここで大事なのは”対戦相手を思考を尊重すること”です。「相手が下手で負けた」的な話はカードゲーム界隈ではよく耳にする言葉ですが、これは相手の思考レベルまで歩み寄ることができなかった自らの責任でもあります。何なら相手は自分の思考を読み切ったうえであえてその行動をしているかもしれません。大切なのは自分ならどうするかを考えることでは無くて、相手がどう考えてこうしたのかを考えることです。しっかりそれを踏まえたうえで、それでも相手のプレイは良くないなと分かれば、そのような相手に勝てるプレイをするだけなのです。 カードの伏せた位置、効果を使うまでの時間、効果を使う順番、チェーンの組み方、色々な所に情報は隠されています。そのようなやり取りがゲーム中にできるようになれば遊戯王はもっと深みを増して面白いものになると思います。

合理的でない選択は時に最善の選択になりえる

ここでの話は非常にレベルの高い読み合いの話になりますが、お互いにデッキについての理解度が高いミラーマッチなどにおいて”合理的でない”という理由でカードの使用順を選択することが非常に稀に起こります。 例えば「magiと名のついたカードをサーチする効果を持ったカードA」と「magiと名のついたモンスターをサーチする効果を持ったカードB」があるとします。この時、基本的な定石としては最初に範囲効果の狭いBから発動することで相手の妨害に対して残しておいたAで受けを作れるので発動順はB→Aになります。 この定石をお互いに知った上でAから発動した場合相手目線だとどのようなことが考えられるでしょうか。相手目線だとAから発動するということはBを持っていない事の裏付けに十分なりえるので、B→Aの順で発動していたら使ってくれず待たれていた妨害を相手はAに対して使ってくれるかもしれません。合理的でないカード選択を敢えてすることで、相手の行動をつり出すことに成功すれば、それは最善の選択だったと言えるのです。 この例は初中級者の方にも理解できるように非常に簡略化して書きましたが、このような読み合いは次の章で話す細い”勝ち筋”を辿る為に重要になってくるので深く理解することは難しくてもざっくり毎回最善っぽそうな動きをするだけが遊戯王じゃないんだなと思っていただけたらうれしいです。

負け筋と勝ち筋を見極める

ゲームの中で今自分が優勢なのか劣勢なのかを感じ取ることが重要だと大局観の話の時にすこし触れましたが、これはどちらかのプレイヤーが追い込まれた時、自分はどのような行動をするべきなのかを判断する重要な材料になります。 お互いに優劣をつけ難いニュートラルゲームの時と自分が優勢な時と相手が優勢な時では同じハンドを持っていても大きくプレイが変わることがあります。自分が優勢な時は自分のここからの”負け筋”は何で相手が是が非でも通したい行動はなんなのかを予測しそれを潰すような動きを、相手が優勢な時は自分のここからの”勝ち筋”は何で相手がミスしてくれるとしたらどのようなタイミングなのかを推測しなければいけません。 勝ち筋と負け筋は表裏一体で、この思考を積み重ねることで勝ち確のゲームを絶対に落とさない力負け確のゲームを拾う力が身につきます。この2つの力はトーナメントシーンで勝ちぬくために非常に重要な要素なので是非身に着けてほしいと思います。

最後に

今回の記事では感覚的に上級者の人が身に着けている考え方を出来るだけ分かりやすく言語化できるように取り組んでみましたがいかがだったでしょうか。対人ゲームの読み合いの部分というのは非常に抽象的ですが、だからこそ深くて面白い所だと思うのでこの記事を気にその部分にも興味を持っていただけたら非常にうれしいです。 この記事がいいなと思ったらRT拡散、Twitter(@kishao_)のフォローお願いします!!

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