MTG黒田正城のエルダー通信Vol.1|禁止カード発表後のスタンダード解説
みなさん、こんにちは。
Magic the Gathering公式解説者 + BIG MAGIC ELDERS の黒田正城です。
この度、縁あってmagi向けに記事を書かせていただくことになりました。
私がmagiを知ったのは2019年8月。
ちょうど日本選手権が行われた日程で、移動中にたまたま知ったのがきっかけです。
BIG MAGICの放送で、私がパックを大量に剥く(そして、爆死する)という定番の企画があり、その際に出たカードなどを販売するため色んなアプリを使っていましたが、magiはまさに私の望んでいたとおりの内容でした。
トレカ専門でユーザ層がバッチリ重なるということ、そして出品者の販売手数料が実質ゼロであるということ、この2点が非常に魅力的です。使い勝手もどんどん良くなっていますので、これからも応援していきたいと思います!
▼著者プロフィール
黒田正城:@masashiro41236
日本人初のプロツアー優勝者。
現在はBIG MAGICの長老枠「ELDERS」としてプレイヤーを続ける一方、公式放送の解説も務めている。
~実績~
プロツアー神戸04 優勝
プロツアー名古屋05 ベスト8
グランプリベスト8 8回入賞 など
さて、それでは本題です。
この記事では私が思っている最新のネタを中心に、色んなお話をしていくつもりです。競技マジックの話以外にも、コレクター向けの話や昔の面白話など、magiならではのネタを披露できればいいですね!
とは言え、第一回はさすがに旬な話題のスタンダードに触れていきましょう。
先週《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》、《むかしむかし/Once Upon a Time》、《夏の帳/Veil of Summer》が禁止になったことを受け、環境は大きく変化しました。これまで延々と鹿にされていた4マナ以上のクリーチャーが目を覚まし、ようやく活躍できるようになったことは大変喜ばしいことだと思います。
※引用:フリー写真素材 フォトック
《オーコ》は、なぜ3マナだったのか、なぜ鹿にする能力はプラス能力だったのか、なぜ初期忠誠値が4だったのか、など疑問に思うことが山盛りのカードでした。エルドレインの看板カードだったため禁止になるかは五分五分だなと思っていましたが、さすがに許されなかったですね(笑)
今回の禁止を受け、それまでTier2で潜んでいた多くのデッキが活躍を始めています。それらのデッキを紹介していきましょう!
ゴルガリアドベンチャー
サンプルデッキ
1:《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
6:《沼/Swamp》
3:《疾病の神殿/Temple of Malady》
3:《寓話の小道/Fabled Passage》
4:《草むした墓/Overgrown Tomb》
8:《森/Forest》
25 lands
4:《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》
4:《穢れ沼の騎士/Foulmire Knight》
4:《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》
2:《真夜中の死神/Midnight Reaper》
4:《残忍な騎士/Murderous Rider》
3:《真夜中の騎士団/Order of Midnight》
4:《楽園のドルイド/Paradise Druid》
4:《探索する獣/Questing Beast》
2:《悪ふざけの名人、ランクル/Rankle, Master of Pranks》
31 creatures
1:《世界を揺るがす者、ニッサ/Nissa, Who Shakes the World》
2:《アーク弓のレインジャー、ビビアン/Vivien, Arkbow Ranger》
1:《呪われた狩人、ガラク/Garruk, Cursed Huntsman》
4 other spells
2:《暗殺者の戦利品/Assassin’s Trophy》
4:《強迫/Duress》
2:《軍団の最期/Legion’s End》
1:《戦慄衆の将軍、リリアナ/Liliana, Dreadhorde General》
2:《虐殺少女/Massacre Girl》
2:《変容するケラトプス/Shifting Ceratops》
2:《打ち壊すブロントドン/Thrashing Brontodon》
15 sideboard cards
《エッジウォールの亭主/Edgewall Innkeeper》から、《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》などの出来事クリーチャーを展開してカードアドバンテージを稼ぐ、息切れしづらいビートダウンです。紹介したゴルガリだけでなく、グルールやセレズニアといったバリエーションが見られます。残念ながら、シミックは見たことがありません(笑)
グルールの魅力は、なんと言っても《エンバレスの宝剣/Embercleave》を効果的に使える点だと思います。序盤のクリーチャーとして《リムロックの騎士/Rimrock Knight》や《軍勢の戦親分/Legion Warboss》も優秀ですね。
セレズニアは《フェアリーの導母/Faerie Guidemother》や《巨人落とし/Giant Killer》など序盤を支えるクリーチャー陣に加えて、全体強化の《敬慕されるロクソドン/Venerated Loxodon》、大量クリーチャー製造の《大集団の行進/March of the Multitudes》が非常に魅力的です。
アドベンチャー系のデッキは、《オーコ》を使ったデッキに比較的相性が良いとされてきました。特に《亭主》が複数並んだときの展開力は大変強力で、除去の薄いシミック系のデッキだと手がつけられません。《むかしむかし/Once Upon a Time》を失ったため1ターン目に《亭主》を出せる確率が減っていますが、新環境においても有力なデッキの一つであることは間違いなく、注意しておく必要があると思います。
ゴルガリ・サクリファイス
サンプルデッキ
1:《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
9:《森/Forest》
4:《草むした墓/Overgrown Tomb》
7:《沼/Swamp》
4:《疾病の神殿/Temple of Malady》
25 lands
4:《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》
4:《金のガチョウ/Gilded Goose》
3:《虐殺少女/Massacre Girl》
2:《真夜中の死神/Midnight Reaper》
3:《残忍な騎士/Murderous Rider》
4:《楽園のドルイド/Paradise Druid》
3:《打ち壊すブロントドン/Thrashing Brontodon》
23 creatures
4:《戦争の犠牲/Casualties of War》
4:《魔女のかまど/Witch’s Oven》
4:《パンくずの道標/Trail of Crumbs》
12 other spells
1:《残忍な騎士/Murderous Rider》
2:《不死の騎士/Deathless Knight》
3:《強迫/Duress》
4:《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》
3:《自然への回帰/Return to Nature》
2:《煤の儀式/Ritual of Soot》
15 sideboard cards
同じ黒緑のデッキでも、方向性が全く違うデッキです。
通称「かまど猫」と呼ばれるこのデッキは、《魔女のかまど/Witch's Oven》で《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》を何度も使いまわして時間を稼ぎ、その間に《パンくずの道標/Trail of Crumbs》で無限にアドバンテージを稼ぎます。地上は《使い魔》と《意地悪な狼/Wicked Wolf》がガッチリキャッチ。飛行やプレインズウォーカーに対しては《残忍な騎士/Murderous Rider》が対応します。相手の横並び戦略には全体除去の《虐殺少女/Massacre Girl》をどうぞ。いずれもパーマネント・カードなので、《パンくずの道標》で調達することができ、デッキ全体がシナジーを形成しています。
上記のカードが入っていればどんな色の組み合わせでも成立するため、多彩なバージョンが存在するアーキタイプです。ゴルガリ、ジャンド、ラクドスなどを見かけます。
ゴルガリは色事故が起きにくく、高い安定性が魅力です。《金のガチョウ》と《パンくずの道標》を自然に使うことができる点もメリットですね。また、《恋煩いの野獣/Lovestruck Beast》や《探索する獣/Questing Beast》によるビートダウンも可能です。
ジャンドだとデッキの代名詞にもなる《波乱の悪魔/Mayhem Devil》が使えます。
《フェイに呪われた王、コルヴォルド/Korvold, Fae-Cursed King》も、フェイではなく鹿に呪われていましたが今なら活躍しそうですね。相手の生贄でも誘発するので、ミラーマッチで非常に心強い存在になります。(誘発が山のように発生するので、処理は大変です)
ラクドスは少し特殊で、非常にアグレッシブな構成になるでしょう。《魔女のかまど》だけでなく、《忘れられた神々の僧侶/Priest of Forgotten Gods》が生贄に捧げる機能を支えてくれています。これらのカードと、《初子さらい/Claim the Firstborn》や《戦慄衆の解体者/Dreadhorde Butcher》のコンボが強烈です。また、ライフをある程度削った後に飛び出す《波乱の悪魔》と《永遠神バントゥ/God-Eternal Bontu》の即死コンボも備えています。
サクリファイス系のデッキはカードのシナジーがたくさん盛り込まれており、回してみるといろんな気付きがあります。しかし、その分ゲーム展開が複雑になり時間切れが起きやすいところが欠点です。特にミラーマッチの時はお互いの誘発やスタックの積み方で頭がパンクしそうになるでしょう。PCでいうところのメモリ不足にならないよう、練習の段階で十分に使い込んでおきたいところです。複雑な戦いをシンプルにする、効果的なサイドカードがあると良いと思います。
《オーコ》が禁止になった後、最もよく目にするアーキタイプです。正直、ここまで多数派になるとは予想していませんでした。使うにしても使われるにしても、動き方や弱点はちゃんと理解しておきたいですね!
ジェスカイ・ファイアーズ
サンプルデッキ
3:《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》
4:《予見のスフィンクス/Sphinx of Foresight》
4:《炎の騎兵/Cavalier of Flame》
4:《風の騎兵/Cavalier of Gales》
1:《帰還した王、ケンリス/Kenrith, the Returned King》
16 creatures
4:《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》
3:《可能性の揺らぎ/Shimmer of Possibility》
4:《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》
1:《抽象からの抽出/Drawn from Dreams》
1:《時の一掃/Time Wipe》
4:《創案の火/Fires of Invention》
17 other spells
3:《ヴァントレス城/Castle Vantress》
3:《寓話の小道/Fabled Passage》
4:《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
2:《島/Island》
2:《山/Mountain》
1:《平地/Plains》
2:《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
4:《蒸気孔/Steam Vents》
3:《天啓の神殿/Temple of Epiphany》
3:《凱旋の神殿/Temple of Triumph》
27 lands
サイドボード
2:《霊気の疾風/Aether Gust》
3:《敬虔な命令/Devout Decree》
2:《解呪/Disenchant》
4:《軍勢の戦親分/Legion Warboss》
4:《神秘の論争/Mystical Dispute》
15 sideboard cards
※引用:フリー写真素材 フォトック
《創案の火/Fires of Invention》を4ターン目にプレイし、《炎の騎兵/Cavalier of Flame》や《風の騎兵/Cavalier of Gales》といった、ハイカロリーなパワーカードを連打するデッキです。これら2種の騎兵は今まで鹿に乗っていましたが、ようやく馬に乗るべきだと気づいたようです。また、《帰還した王、ケンリス/Kenrith, the Returned King》も奈良公園の遠足から帰還しました。
《願いのフェイ/Fae of Wishes》を経由してサイドボードから様々なカードを繰り出すバージョンも存在します。色の合わない《龍神、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Dragon-God》や《戦争の犠牲/Casualties of War》等、強烈なカードをプレイできるのが強みです。
《予見のスフィンクス/Sphinx of Foresight》は期待の新人です。ファイアーズは《創案の火》というキーカードに頼ったデッキなので、このカードにたどり着ける確率を最大限高めるための効果的な工夫だと思います。普通に4マナ4/4飛行も、思ったより活躍します。
同様の理由で《可能性の揺らぎ/Shimmer of Possibility》も必須パーツですね。追加の土地を探すこともできるので便利な一枚です。
《轟音のクラリオン/Deafening Clarion》や《時の一掃/Time Wipe》など全体除去が多数含まれているため、クリーチャーデッキに対して非常に強い構成です。そのため、禁止裁定が出る前の環境で一番人気だった、スゥルタイに対しても有利なデッキでした。
一方、シミック系のデッキは構成が似ていますが、相性は全く異なります。《霊気の疾風/Aether Gust》や《厚かましい借り手/Brazen Borrower》など、インスタントの妨害手段が豊富なことに加え、サイド後は《否認/Negate》、《軽蔑的な一撃/Disdainful Stroke》と妨害がてんこ盛り。そのため1本目を取れても、2本目以降に安定した勝率をキープするのは難しかったと思います。
私も《創案の火》は大好きで、白の代わりに黒を使ったグリクシス・ファイアーズを作成しました。グランプリは2日目進出まで行きましたが、残念ながら《オーコ》の厚い壁を超えることはできませんでした。とにかく《夏の帳/Veil of Summer》が強すぎて、グリクシスだとどの呪文も引っかかってしまうのでお手上げでしたね・・・
禁止カードの影響を受けてシミック系のデッキが大幅に減少したため、このデッキは非常に立ち位置が良くなりました。カードがどれもパワフルなので人気もあります。ただ、2ターン目の《オーコ》とは違って処方法もたくさんありますし、相手のターンに呪文をプレイできないというデメリットは想像以上にきついので、禁止になるようなレベルではないと思います。
ティムール《荒野の再生》
サンプルデッキ
4《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》
2《厚かましい借り手/Brazen Borrower》
2《パルン、ニヴ=ミゼット/Niv-Mizzet, Parun》
8 creatures
4《選択/Opt》
4《成長のらせん/Growth Spiral》
4《薬術師の眼識/Chemister's Insight》
4《荒野の再生/Wilderness Reclamation》
4《発展+発破/Expansion+Explosion》
3《炎の一掃/Flame Sweep》
2《神秘の論争/Mystical Dispute》
1《否認/Negate》
26 other spells
4《繁殖池/Breeding Pool》
4《蒸気孔/Steam Vents》
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
3《寓話の小道/Fabled Passage》
2《天啓の神殿/Temple of Epiphany》
1《ヴァントレス城/Castle Vantress》
3《神秘の神殿/Temple of Mystery》
2《島/Island》
2《山/Mountain》
1《森/Forest》
26 lands
4《夜群れの伏兵/Nightpack Ambusher》
3《焦熱の竜火/Scorching Dragonfire》
3《霊気の疾風/Aether Gust》
3《否認/Negate》
1《神秘の論争/Mystical Dispute》
1《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》
15 sideboard cards
最後に紹介するのは、コンボとコントロールの要素が混ざったデッキ。
手前味噌ながら、先日WPNプレイヤーズツアー予選を突破した私のリストです。これまでに紹介したデッキに対して概ね相性が良く、非常に良い立ち位置であるため使用することにしました。序盤を《砕骨の巨人》や《炎の一掃》でしのぎ、《荒野の再生》を貼ってから巨大な《発展/発破》に繋げるのが勝ち筋です。
《エッジウォールの亭主》や《大釜の使い魔》、《楽園のドルイド》等のクリーチャーが並ぶ展開に対しては、《炎の一掃》が劇的に刺さります。赤単のように極端に尖ったデッキでなければ、こちらのコンボ成立までに十分な余裕があるので楽に戦えると思います。特に2ターン目の《パンくずの道標》は大歓迎ですね。
ファイアーズ系のデッキにも有利だと思います。ただ《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》だけは注意してください。このカードが着地すると、《荒野の再生》は機能不全に陥ります。《砕骨の巨人》と《厚かましい借り手》をうまく使って対処しましょう。もしメイン戦を落としてしまっても、サイド後は十分なカウンターを備えていますので、2本取り返すことができるはずです。
サイド後はほとんど《夜群れの伏兵》で勝っています。これまでは《荒野の再生》をプレイした後のアクションが《薬術師の眼識/Chemister's Insight》だけで、相手からすると4ターン目にプレッシャーを受けることはなかったのですが、このカードのおかげで攻守逆転が可能になりました。《害悪な掌握/Noxious Grasp》の数が大きく減っていることも追い風ですし、そもそもこのデッキ相手にサイドインするのはためらわれますね。
以上、今回はスタンダードのデッキについて色々と思うことを書いてみました。繰り返しになりますが、環境が固まっていない今の時期は最高に面白いです。
私も、ここで紹介したデッキ以外にも、《グレートヘンジ/The Great Henge》や《貪るトロールの王/Feasting Troll King》、《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn》など、これまでの速度ではまったく間に合わなかったカードを使ってみたいと思っています。
ぜひ、新しいデッキを持って大会に足を運んでみてください。必要なカードはmagi経由で買ってもらえると嬉しいです(笑)
それではまた、次回お会いしましょう!