細川 侑也が選ぶ『テーロス還魂記』各色トップ3
あけましておめでとうございます。今年も一年、よろしくお願いいたします。
さて、今週末1/24(金)は新セット『テーロス還魂記』発売日! というわけで新年最初の記事は、『テーロス還魂記』の各色の注目カードを、ランキング形式にてお届けしたいと思います。
【magi pros 細川 侑也選手(@yuyan_mtg)プロフィール】
本日よりmagi prosとして活動していくこととなりました。今後はmagiのメディアなどでも記事を執筆する予定ですので、ご期待ください。トレカ専用フリマアプリ「magi」もよろしくお願いいたします。招待コードで300ポイントもらえます。
— ゆうやん/Yuya Hosokawa (@yuyan_mtg) November 2, 2019
招待コード:IW4L4Phttps://t.co/6nMc2r76kZ実績 GP名古屋2018 準優勝 GP横浜2019 トップ8 GP千葉2019 トップ8
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■白
3位:《メレティス誕生》
『ドミナリア』以来の登場となる英雄譚。毎ターン異なる能力が誘発する英雄譚というカードは、使い切るまでに時間がかかるのと引き換えに、マナ効率面で非常に優秀です。 Iの土地サーチ能力は、ほとんどのデッキにとって嬉しいものでしょう。 IIの0/4の壁を出す能力は、3ターン目にプレインズウォーカーを出して生き残らせたい際に助けになるでしょう。《時を解す者、テフェリー》でクリーチャーをバウンスして、もう1体を壁で受け止めれば、《時を解す者、テフェリー》が残った状態でターンが帰ってくる確率は高いはずです。
最後の能力は2点回復と地味ではありますが、コントロールデッキならライフゲインはいつでも欲しいところでしょう。同じく新カードの《太陽冠のヘリオッド》を3ターン目に出していれば、どこかに+1/+1カウンターを乗せられますね。 総じてコントロールデッキに入れたい1枚です。青白コントロールや、今回強化されるエスパースタックスなどに居場所を見つけるのではないでしょうか。
2位:《太陽の宿敵、エルズペス》
脱出という新能力を持つ唯一のプレインズウォーカー。 マイナス能力しか持たないこのカードですが、逆に言えば倒しても倒しても復活するプレインズウォーカー。非常に厄介です。 適当にトークンを2回生み出して、《太陽の宿敵、エルズペス》が落ちたらまた場に戻せば良く、能動的に墓地に落として場に戻すこともできるので、放置もさほど友好ではありません。 横に展開するカードなため、《時を解す者、テフェリ―》に強く、-1能力のパンプアップでプレインズウォーカーへの睨みも大きいでしょう。
アグレッシブなデッキの息切れ防止としての役割はもちろん、コントロールデッキでは時間稼ぎ・プレインズウォーカーへの対処手段・フィニッシャー・ライフ回復とたくさんの役割を持てるプレインズウォーカーです。 新環境の白いコントロールデッキに、《太陽の宿敵、エルズペス》の席はまず用意されているはずです。
1位:《太陽冠のヘリオッド》
そして白の1位は大方の皆様の予想通り、《太陽冠のヘリオッド》。 プレビューで登場した瞬間に《歩行バリスタ》との無限コンボが発見され、それなりの騒ぎとなったのは記憶に新しいですね。
スタンダードでも、《光り角の海賊》と《水底の生術師》を組み合わせた3枚で無限コンボが可能となっており、世のデッキビルダーたち歓喜の1枚となっていることでしょう。
コンボ専用のカードかと言われれば、そんなことはありません。ライフを回復する、という事象は何かのついでに発生します。絆魂クリーチャーで殴った時はもちろんですし、《不動の女王、リンデン》との相性はもちろん、パイオニアでは《聖域探究者》で一気にカウンターを増やすなど、打点を上げる手段はいくらでも思いつきます。 個人的には《復讐に燃えた血王、ソリン》との相性の良さにも注目しています。
果たしてパイオニアで行われるグランプリ名古屋、プレイヤーズツアー名古屋は《太陽冠のヘリオッド》が暴れることになるのでしょうか。楽しみです。
■青
3位:《深海住まいのタッサ》
『テーロス』ではプロツアー優勝デッキの青単信心の核となったタッサ。その青いカードとは思えない凶悪なサイズとマナコストの軽さがウリだった彼女(?)ですが、今回は4マナに引き上げられています。 そして、殴りに特化していた前回と異なり、こちらは自軍クリーチャーをいったん追放して再び場に戻すというテクニカルな能力。 この能力を使えば、「戦場に出た時に~」と書いてあるクリーチャーの能力を使い回せます。誰もが最初に思いつくのは、《裏切りの工作員》との組み合わせでしょうか。
構築ではあまりお目にかかれないかもしれませんが、攻撃不可などのエンチャントが付いた際には、それを剥がすことも可能です。 また、この手の能力としては珍しく、追放後に戦場に戻る際は「オーナーの」ではなく「あなたの」コントロール下になります。つまり、《初子さらい》などで奪った対戦相手のクリーチャーを、永久にこちらのコントロール下に置くことができるのです。 下の環境に行けば行くほど、戦場に出た時に効果を発揮するクリーチャーは増えます。今回のタッサも、構築で見かけることが多くなるのではないでしょうか。
2位:《タッサの信託者》
青青とマナシンボルが重いながら、1/3にライブラリー検閲のおまけつきとまあまあな性能のクリーチャー…と思いきや最後の一文に「ゲームに勝利する」と書いてあり、思わず二度見してしまったカード。 自身の信心分もカウントしますから、実質ライブラリーが2枚であれば勝利となります。 この手のカードとしては《神秘を操る者、ジェイス》や《研究室の偏執狂》などがいますが、それらと比べても破格の使いやすさです。
2ターン目に唱えても十分な性能なため、デッキによっては4枚入ることもあるでしょう。 当然ながら、コンボパーツとしても優れています。《タッサの信託者》と《地ならし屋》を一緒にプレイすれば一撃必殺。パイオニアにも《真実を覆すもの》があります。
ちなみに、《タッサの信託者》の能力に誘発して《タッサの信託者》が除去されてしまうと、その時点で他に青いパーマネントをコントロールしていない場合は、ライブラリーを見ることはできないので注意です。
1位:《タッサの介入》
タッサ、タッサと続いて1位もなんとタッサの名前が付いたカードです。今セットはタッサ推しなのかもしれません。 今回の介入シリーズはどれもX呪文となっており、片方のXの値が2倍となっています。《タッサの介入》の場合はドローと打ち消しで、打ち消しに際して支払わせるマナが倍になります。 一つずつ能力を見ていきましょう。 まずは上側。X枚見て、その内の2枚を加える。4マナ(X=2)で《タッサの介入》を打ったなら、2枚見て2枚を引く。4マナ2ドロー相当で、《薬術師の眼識》に比べると再活分で劣ります。 そして打ち消しは、Xの2倍のマナを要求。3マナ(X=1)でプレイすると2マナ要求で、これはちょっと弱い《火消し》です。
と、このようにそれぞれが既存のモードより弱いこのカードですが、重要なのは、どちらを使うかを自分が選べる、という点です。 例えばあなたの手札に《吸収》があったとしましょう。対戦相手は打ち消しを警戒して、4マナではなく2マナのクリーチャーを出してきました。もちろんあなたはこれを打ち消したくありませんが、《吸収》を構えたこのターンは無駄になります。 逆に手札に《薬術師の眼識》がある状態で、相手は思い切って4マナのカードをプレイしてきたら、あなたは仕方なくそれの対処手段を求めにカードを引きに行くことしかできません。
ドローと打ち消しは、かみ合う状況がそれぞれ異なり、裏目を引きやすいカードたちなのです。ですが、《タッサの介入》は状況に応じてそれらを使い分けられます。 マナが潤沢にある後半では、ドローモードは《時を越えた探索》のように大量のカードを見ることができるようになりますし、打ち消し呪文としてもほぼ確定カウンターとして機能します。 似たカードの《至高の意志》は終盤ではどちらのモードも弱かったですが、《タッサの介入》はその弱点も消えているのです。
世の青好きは、《タッサの介入》を買うべし!
■黒
3位:《エレボスの介入》
黒の介入は、墓地追放とクリーチャー除去&ライフ回復。 スタンダードでは《大釜の使い魔》や今回の脱出カードが入る程度で、さほど墓地は使われないと思われますが、下の環境に目を向ければ、墓地は必ず気を付けなければならないリソースです。
多くのデッキはメイン戦では墓地に触ることができません。なぜなら墓地に触る手段は限られており、またビートダウンなどに引いた際に死に札となってしまうからです。墓地利用デッキはそんな事情につけこんでいきます。 しかし、もしもビートダウンに強い墓地追放カードがあったなら?《エレボスの介入》はまさにそんな1枚。 単なる除去として使用してもそこそこ強いですし、それにインスタントの墓地追放まで付いてくるなら、黒いデッキのメインに入ってもおかしくはありません。
2位:《アスフォデルの灰色商人》
コモンから昇格した再録組。かつて黒単信心で一世を風靡したこのカードは、再びスタンダードで旋風を巻き起こすかもしれません。 《ロークスワインの元首、アヤーラ》は黒トリプルシンボルで相性ばっちりですし、戦場に出た時にたっぷりとライフゲインできるため、《ボーラスの城塞》との組み合わせも強烈です。
《残忍な騎士》など黒にはシンボルの濃い強力なカードが多数。黒単の躍進に期待してしまうのは当然のことでしょう。
1位:《悪夢の番人》
近頃のデーモンはすっかり人間に対価を求めなくなりました。かつてはアップキープに生け贄を要求して、生け贄がなければ自身に襲い掛かってくるのがデフォルトだったのですが、最近のデーモンは優しすぎます。 《悪夢の番人》は4マナ4/4飛行でありながら、そのメリットが破格です。 本体のサイズこそ1/1になってしまいますが、「戦場に出た時~」という能力はしっかりと誘発しますし、コピーにはマナコストも存在します。そのため、《アスフォデルの灰色商人》が死亡してトークンに生まれ変われば、相手にダメージが入ることになります。《真夜中の死神》などを倒すのも躊躇うことになるでしょう。
加えて本人は4/4飛行という優秀なサイズ。かなりのエリートデーモンです。
■赤
3位:《嵐の怒り》
クリーチャーは除去できるけど、脇のプレインズウォーカーが処理できない。 そんな悩みを解決してくれるかもしれないのがこのカード。 今のスタンダードで4点を耐えるクリーチャーはさほど多くありません。《時の一掃》とは言えないまでも、それに近い効果は望めるでしょう。
4点のダメージで倒せるプレインズウォーカーはさほど多くありませんが、それはあくまで他に何もない場合。例えば《世界を揺るがす者、ニッサ》の忠誠度は1回能力を使われたとして6ですから、ターン終了時に《砕骨の巨人》などで2点を与えておけば、土地もろとも吹き飛ばすことができます。
赤いコントロールデッキを作りたくなる1枚ですね。
2位:《アゴナスの雄牛》
今回の脱出持ちの中で最も追放の数が多いこのカードですが、それも納得。なんと脱出コストは2マナで、5/3として場に出て、更に手札を捨てて3ドローという能力まで付いているのですから。 スタンダードでは出番がないかもしれません。主戦場はやはり下環境でしょう。 墓地をリソースとして使うデッキは2ターン目に8枚以上の墓地があることも珍しくないですし、そういったデッキは手札に不要なカードを抱える瞬間も多く、捨てて3枚引くことがメリットに働きます。
このカードがたくさん使われるデッキが出てくるとすれば、きっとそのデッキはすさまじく強力なものとなるでしょう。墓地はいつだって危険なのです。
1位:《死の国からの脱出》
と、墓地の危険性を語ったところで登場した大問題児。今回のセットで最も危険なカードだと思います。 往年の名カードで現在もヴィンテージ以外の構築フォーマットでは使用できない《ヨーグモスの意志》というカードがあります。
墓地のカードをそのターン、好きなだけ使えるようになるという恐ろしいカードです。 ですが、この《死の国からの脱出》はその《ヨーグモスの意志》を上回る可能性すらある強さのカードです。 最も着目すべき点は、使用したカードがそのまままた墓地に落ちるということです。つまり墓地さえ許せば、何回でも同じカードを使用できるのです。 パイオニアやレガシーでは、早速凶悪なデッキが開発されています。下環境になればなるほど危険なこのカード、スタンダードでもすごいデッキが開発されれば、大暴れすること間違いなし。
■緑
3位:《狼柳の安息所》
久し振りに、2マナのマナブースト呪文がスタンダードにやってきました。 条件付きで2マナになる土地サーチ呪文などはありましたが、完全に無条件なのは久し振りです。とはいっても、土地サーチではなくエンチャントですが。 おまけとして付いている狼を生み出す能力もばかになりません。序盤はマナ加速、後半は2/2のクリーチャーになるのですから、十分でしょう。 スタンダードでそれなりに使われるカードになると思います。
2位:《セテッサの勇者》
帰ってきたキーワード能力、星座。今回の星座クリーチャーは全員エンチャントではないため、自身が戦場に出た時には何もしてくれません。似たカードである《開花の幻霊》とはそこが違います。
ですが、その代わりにマナコストが軽く、自身も強くなっていきます。 エンチャントが出るたび、という条件はデッキ次第ではかなり緩くなります。クリーチャーもエンチャントだったりしますし、脱出を持つエンチャントもあれば、相手に付けるエンチャントもありますから、意識してデッキを構築すれば、このカードは無尽蔵のアドバンテージ源となります。 自身のサイズが大きくなればそれだけ除去されにくいですし、そもそもフィニッシャーになってくれます。スタンダードでエンチャントレス、組んでみたくなりますね。
1位:《イリーシア木立のドライアド》
《虹色の前兆》と《踏査》を併せ持つクリーチャー。
そのどちらもモダンのタイタンシフトとかみ合う能力ですが、やはり特筆すべきは《虹色の前兆》能力。すべての土地がすべての基本土地タイプということはつまり、どんな土地でも6枚並べば全部山になるのです。5枚の森に《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を置いても3点飛び、6枚の土地から《風景の変容》を打つと4枚の《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と2枚の土地で72点。フェッチランドはサーチした土地と合わせて6点火力になります。
キルターンが縮まる《虹色の前兆》は、タイタンシフトに採用されていたこともありましたが、ネックだったのはマナ加速ではないという点でした。 《イリーシア木立のドライアド》はマナ加速であり、《虹色の前兆》です。タイタンシフトの強化は火を見るより明らかですね。
■多色・アーティファクト
3位:《圧倒的洞察》
呪禁オーラ待望の1枚。 《執着的探訪》に白が追加されて絆魂が付くようになりました。一応、《執着的探訪》のデメリットも消えています。
呪禁オーラのようなデッキは、基本的に守りを考えることはありません。1体のクリーチャーにエンチャントを張り、相手の軍勢と殴り合うことになります。 数的不利のダメージレースを制するには、クリーチャーの強化は必須です。それを引き込むのが《執着的探訪》ですが、ドローが付いているエンチャントはパワー修正値が低く、ダメージレースにはあまり向きません。 その弱点を1枚で補うのがこの《圧倒的洞察》。多くの呪禁オーラ好きが求めていたカードなのではないでしょうか。
2位:《影槍》
これまで呪禁を失わせたり、呪禁を無効化するカードは何枚か出ましたが、どれもほとんど使われませんでした。 呪禁カードは時に致命的になりますが、全デッキが呪禁カードを入れているわけではないからです。《エレボスの介入》の時に話した墓地対策に近いですね。
そして、この《影槍》もやはり《エレボスの介入》と似た強さを持ったカードです。 即ち、呪禁と破壊不能を失わせるカードでありながら、装備品としての性能もすこぶる高いのです。 1マナという軽さで装備コストは2、装備すると+1/+1にトランプル、絆魂。凄まじい強さです。 ここまで強ければ、呪禁クリーチャーが入っていないデッキ相手であろうと、ほとんど腐ることはありません。 とりあえずクリーチャーデッキならばお守りで入れたい、そんな1枚です。
1位:《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
《王冠泥棒、オーコ》以来、シミック君は一体どうしてしまったのでしょうか?何か悪い友人と付き合いがあるのではないかと心配になります。
3マナで使うと《成長のらせん》に3点ゲインのおまけつき、脱出コストは5で場に出ると4マナ6/6。殴るとゲインとドロー。 強すぎますし、《ハイドロイド混成体》のあるシミックカラーと非常にかみ合っていますね。 能動的に墓地を肥やせる《茨の騎兵》との組み合わせは非常に強力。何もない場から《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が落ちて戦場に戻ってきたら悪夢という他なし。
新環境のデッキに困った方は、まずはシミックランプに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を入れてアップデートするのが良いと思います。
■土地
3位:《廃墟の地》
『イクサランの相克』より再録の、下の環境でも使われている特殊地形破壊ランド。色マナの供給も行えることから、コントロールが好んで使っています。 そしてそれはスタンダードでも同じことが言えます。『エルドレインの王権』で登場した城シリーズが強力なため、《廃墟の地》は使われることになるでしょう。
基本地形がデッキに入っていないとこのカードは《不毛の大地》になるため、デッキ構築の際は注意が必要です。5色デッキであろうとも、少しの基本地形は入れるようにしましょう。
同率1位:《欺瞞の神殿》・《啓蒙の神殿》
ようやく再録された友好色占術ランド。 占術ランドの価値は非常に高く、後半ならば土地を下に送れば実質セットランドが1ドロー相当になりますし、序盤のアクションに辿り着きたい場合にも重宝します。 そんな友好色占術ランドサイクルは、どれも順位をつけがたいですが、あえてつけるとするならば、青い占術ランドが上位となります。
その理由は、コントロールデッキで使用する占術ランドの方がより強力だからです。 早いターンからアクションを起こし続けたいアグロデッキは、2ターン目のタップインが致命的な遅れを招くこともあります。いくら安定感が増すとはいえ、占術ランドを手放しでフル投入することはできません。
コントロールならば1ターン目にアクションがある方が少なく、序盤の遅れを全体除去などで取り戻せます。 そのため、青い占術ランドはより価値が高く、沢山使われることになります。 とはいえ、とりあえず全種揃えておきましょう!土地は裏切りませんからね。
それではみなさん、『テーロス還魂記』を楽しみましょう! また次回。